コラム

COLUMN

2021年10月16日

データの活用|風を利用する

さて、太陽をざっと理解できたところで、他の自然エネルギーも見てみましょう。

パッシブデザインにおける活用・調節すべき自然エネルギーとは太陽・風・地熱でしたよね。

ここでは風について見ていきましょう。

自然風の利用ができているデザイン、その主な役割は・・・

①内部発熱により加熱された室内の熱気を取り除く「排熱

②人体の周りに風を起こすことで冷却を促進し涼感を得る「採涼

この2つのうち①の排熱は実はたいした風速が必要ないのですが②採涼を実現するためにはそれなりに強い風が必要になります。

ただしこの風はなかなか厄介者でして・・・太陽の動きはキチンと予測可能であり、日照・日射シミュレーションで確認することができるのですが風はそう上手くいきません。

年間を通じてその敷地によく吹く風を「卓越風」というのですが、自然風利用の設計を行う際にはなんとなく窓をつくるのではなく「できるだけ情報を集めて快適な家を実現できる確率を上げる」という意気込みが必要となります。

それでは風に関する情報の入手方法についてご紹介いたします。

1⃣環境省の風況マップ(全国)をダウンロードしてみる

こちらを見ていくと地図から選んで全国の20年間の年平均風速や最も吹く風の方位(16方位)が確認できます。

慣れてくると、グーグルマップなどで地形図を見ただけで何となく広い範囲のエリアはこんな風が吹きそうだな~と予想することも可能になってきます。そのぐらい風は山・海・大きな川の影響を受けます。

簡単に言うと、昼は海から山に風が吹き、夜は山から風が海に向かって吹きます。

2⃣「気象データ|自立循環住宅」から各県・エリアごとの月別風配図を見てみる

各県ごとの月別風配図を見ることができるのですが、大阪にある観測所が少なくてなかなか使いづらいです。多い県は25個以上観測所があるのですが大阪は7か所しかないので、建築地の最寄りのデータを参考に見るといった程度になります。

弊社のある東大阪市鴻池新田で見てみると「大阪」と「生駒山」のほぼ中間地点になるのですが、参考にすべき「大阪」と「生駒山」の風がずいぶん違います。

大阪では西南西から北東にかけて袈裟切りに風が流れていて、「生駒山」ではほとんど東西に流れています。

分析してみると「大阪」の観測所は大阪市内にあるので、大阪湾からの影響を受けやすく昼は海から(西南西)から風が吹きます。夜は淀川沿いに北東から風が海に向かって吹きます。

生駒山は、標高626m地点のいつもの生駒山頂で計測しているデータなので、すこし地上の風とは違うかもしれませんが山でとっているので当然昼は海(西)から吹き、夜は山(東)から吹きます。

どちらのデータからでも、20年間の平均の風向・風速が見られるのでだいたいのイメージをすることはできます。私の住んでいる東大阪市の鴻池新田の風は、実際には「生駒」の東西の風向よりやはり「大阪」のように、昼間は南南西から吹き、夜は北東から吹く風向のほうが実態に合っているように感じています。

特に夜の風向は北東というより「北」に近いのではないかな~と個人的には感じています。夜間はかなりの通風量なので真夏以外の中間期は南北の窓を開けて、積極的に通風利用をしています。

ただし自分の家は3階建てなのですが、周りに3階建てはほぼ存在しないという恵まれたケースになります。実務では結局のところ風についてはケースバイケースなので、これらの情報データは一定の参考程度にするという扱いが適切になります。

実際の設計業務の中では卓越風を意識しながらも全方位の通風を考え、高所の開閉窓による立体通風、袖壁や縦すべり窓を複合的に利用したウインドキャッチャーなど、家全体でしっかりと通風計画を考えることがなにより大切です。