コラム

COLUMN

2019年6月18日

パッシブデザインとは その2

まずはもう一度「パッシブデザインの定義」について、特徴を理解していきましょう。

 

-パッシブデザインの定義-

①建物のあり方に工夫して、
②建物の周りにある自然エネルギー(太陽、風、地熱)を
③最大限に活用・調節できるようにし、
④高い質の室内環境を実現させながら、
⑤省エネルギーに寄与しようとする、
⑥建築設計の考え方と実際的手法。

 

①建物のあり方に工夫して
これは建物における敷地上の配置、性能、形状、窓の大きさや配置、窓まわりに設ける部材、間取りなどに工夫を凝らすという意味であり、前回でもお話ししたように「機械設備をどうするか?」をいう話とは意味合いがちょっと異なります。設計という行為の中には、確かに「設備の選択」も含まれてはいますがパッシブデザインでは設備に重点を置くのではなく、建物のあり方そのものに向かっていくことを示しています。

 

②建物の周りにある自然エネルギー(太陽、風、地熱)を
あらゆる建物はその周りに自然エネルギーが存在します。太陽から届くエネルギー形態は光です。これは「明るさ」をもたらすわけですが、光は何かに当たるとそこで「熱」に変わります。この「太陽によってもたらされる熱」はパッシブデザインにおいてとても重要な要素となります。

風は中間期(春や秋)に重要で、風を通すことによる排熱、そして風が体に当たることによってもたらされる涼しさ利用します。

最後に地熱ですが、現時点(2019年)で地熱を利用する有効なパッシブ的手法はまだ明確には確立されているとは言えません。ただし、有効な自然エネルギーであることに変わりはありませんので今後に期待です。

 

③最大限に活用・調整できるようにし
パッシブデザインは自然エネルギーを活用するだけではありません。太陽熱は冬には有効ですが、夏は邪魔になりますので、それを遮ったり、外に逃がしたりする必要があるのです。また光環境においても過剰な明るさは逆に室内の明暗のコントラストがついてしまい不必要なものです。

④高い質の室内環境を実現させながら
パッシブデザインは 高い質の室内環境を目指す設計手法です。

 

⑤省エネルギーに寄与しようとする
パッシブデザインは省エネルギーを目指す設計手法です。

 

⑥建築設計の考え方とその実際的手法。
パッシブデザインはまず、建築設計の思想という位置づけとして捉えられます。その上で、その思想を実現するための実際的な手法という意味として表現されます。

 

さらっと読むと2行の定義なのですが、読み解いてみると奥が深いですよね~。

「高い室内環境を実現し」の部分を=「快適で」と読みかえると、快適で省エネな暮らしを実現するための設計手法となります。

③の活用&調節という表現が渋いですね(笑)具体的には、設計実務者の知識と経験が深く必要な項目だと思っています。やはりこの部分の理解度によって、実際に出来上がるパッシブデザインハウスにも差が生まれてしまいます。

 

次回からは、少しづつ具体的な説明になっていきますよ~。

 


参考文献

著者:野池 政宏『パッシブデザイン講義』

 

野池 政宏(のいけ まさひろ)
1960年生まれ。住まいと環境社代表。岡山大学理学部物理学科卒。
(一社)Forward to 1985 enegy life 代表理事、NPO法人WOOD AC理事、自立循環型住宅研究会主宰。主な著書:『パッシブデザイン講義』Passive-Design Technical Forum、『パッシブデザインの住まいと暮らし』(共著)農文協、『省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル』エクスナレッジ、『本当にすごいエコ住宅をつくる方法』エクスナレッジほか。

 

一般社団法人Forward to 1985 energy life

3.11をきっかけに、野池政宏が発起人となり、省エネ住宅と暮らし方を普及すべく立ち上げた団体。全国の工務店、設計事務所、建材・設備メーカー(約200社)を中心に構成されている。快適で省エネな住宅に関する情報の配信、アドバイス、ツール開発などを行っている。

 

参考文献

著者:野池 政宏『パッシブデザイン講義』