コラム
COLUMN
2022年3月4日
地熱(地中熱)利用とは
さて、自然エネルギーの最後は地熱です。
ファイナルファンタジーなどのRPGゲームでは地震や火山噴火が地系の最強技だったりしますよね。意外と他属性の攻撃より効果があるイメージがあります。
イメージ通りに地球の中心の核にある熱は、6000℃という猛烈な数値をたたき出しています。当然こんな熱は激しすぎて利用できませんね。全然パッシブじゃありません・・・(笑)
外核までたどり着くだけで地殻50km+上部マントル670km+下部マントル2900km=合計3620kmもの距離を掘らないといけないので、10kmしか地面を掘削することができない人類にはそもそも利用することができません。
・・・どうでもいい話ですが、「ザ・コア」という地球の核まで掘り進んで核爆弾をぶち込み、突然とまってしまった核の対流を再起動させるというC級SF映画がありました。
そんなことをするには凄まじい技術が必要ですが、映画では天才博士が一人ですべてのメカを作っていましたよ・・・地球版アルマゲドンと言われている怪作です。見る必要は全くありません(笑)
そもそも、地熱利用というのはそもそもそんな大きなエネルギーの話ではありません。(温泉やマグマのように地下から湧き上がってくるイメージですが・・・笑)
一般的に地熱と言われているのは、深さ10mくらいの地中熱のことで、大気の温度(気温)から与えられたもので、それ以上でもそれ以下でもない程度の温度です。だいたいそのエリアの年平均温度と同じになり、一年中一定の温度となります。大阪では17℃くらい。確かに地表(土)の温度や大気の温度と随分違いますよね。一定の温度を保つって、なんだかすごいです。
出典:環境省「地中熱ヒートポンプシステム」
理由を見てみましょう。まず太陽光の熱は大部分が地表に吸収されて地面を温めます。陽が射すと空気が温まって気温が上がるように感じますが、それは違うんです。実は地面が温まってそれが空気に伝わって気温は上がっていきます。地面は蓄熱性が高いので、太陽の熱をため込みながら、ゆっくりと地下に伝えていきます。そのスピード(温度伝達率)はとっても遅く、大体1か月で1m弱という遅さになります。やがて6か月後には地下5m付近までその熱が到達しますが、その頃にはもう地上に冬がやってきて、地表面が冬の低い気温で冷やされ始めています。その冷気もまた熱と同じくノロノロ進むので6か月後に地下5mに達するのですが、その頃にはまた夏になっているので温度のイタチごっことなります。
地中の温度はこの四季のサイクルを繰り返しているので、深くなればなるほど年中の温度が安定して、地下10mを超えるとほぼ一定になるのです。
さて、ではその安定した17℃くらいの熱をどのように地熱利用するのでしょうか?
ヒートポンプを利用するものや空気循環を利用するものが代表的です。どれも「建築のあり方」と関わる部分が少なく、地熱を熱源として利用するシステム・機械装置といった位置づけになります。
また地下10mの熱と言えば簡単そうに聞こえますが、建築的にはそれらの熱を利用するための管やチューブなどを地中に埋める必要があります。当然10mの土の圧力や地震に耐える強度が必要であり、地下水や湿気、臭気、カビ等などが入り込まないようにする必要もあり、そういった対策はなかなか大掛かりで複雑・・・そして高額な機械設備の投資・・・簡単には住宅建築に取り込むことはできませんね。
機械設備にできるだけ頼らず、建物のあり方に工夫して自然エネルギーを最大限に活用・調節して省エネかつ快適に過ごすための設計手法をとっているパッシブデザインとは、少し考え方が違いますよね。
という理由で現在はまだ地熱利用に有効なパッシブ的手法は確率されているとは言えない状況になります。ただし、有効な自然エネルギーであることに変わりはありませんので今後に期待ですね。