コラム
COLUMN
2021年6月21日
日射遮蔽|パッシブデザイン5要素
今回はパッシブデザインの5要素のうち、日射遮蔽についてご説明いたします。
日射遮蔽は夏を涼しく快適に過ごすための基本となるものです。もちろん冷房をかけたときにも、「取り除く熱を減らす」という意味で省エネルギーにつながります。断熱は冬の基本、日射遮蔽は夏の基本と覚えておいてください。
「日射遮蔽」と聞くと窓からのギラギラした太陽の日射を防ぐというイメージがあるかと思いますが、もう少し広い概念としてとらえてみましょう。
整理するとこのようになります。
①窓から入る日射を防ぐ
②屋根や外壁に当たる日射量を減らす
③屋根や外壁に当たった日射をはじく
④断熱によって屋根や外壁から室内に入る熱量を減らす
⑤通気層や換気によって屋根や外壁から室内に入る熱量を減らす
このように日射遮蔽は窓からだけではなく、建物全体で日射による熱量を減らす工夫であることが分かります。
ただし、やはり①窓から入る日射を防ぐという内容が何より重要となります。屋根の面積のほうが窓よりはるかに大きいので意外だと感じられるかもしれませんが、夏の窓から室内に入ってくる日射熱(太陽熱)は家全体の入ってくる熱量の内訳で考えると、なんと約74%を占めるのです!ちなみに屋根はたったの6%のみ・・・窓から入り込む直射日光を防ぐことがどれだけ大切か、わかっていただけたでしょうか?
実際のパッシブデザインではサッシ・ガラスの種類だけでなく、窓回りに工夫を施すことで日射遮蔽のレベルを大きく引き上げることができます。
しかしこの窓回りの工夫は設計・建築だけでは完成しません。実際にお住まいになる方の暮らし方が実際の快適さに大きく影響するのです。
例えば、普通のペアガラス(Low-Eガラスではない)の場合、そのまま日射を当ててしまうと、窓の外側にブラインド(すだれも可)を閉めた状態の窓と比べて4倍以上の日射熱を家の中に取り込んでしまうことになります。
窓の外側にブラインドを設置するのは設計行為ですが、それを適切に閉めるかどうかは暮らし方の問題になります。つまり、パッシブデザインは設計・建築しておしまい!というわけにもいかないということです。このあたりがパッシブデザインは「暮らしの文化」といわれる理由でもあります。
ここで窓回りの工夫について少し見てみましょう。窓は普通複層ガラス(Low-Eではないペアガラス)と想定しています。
1⃣窓に付属部無し・・・室内に熱が79%侵入
2⃣内側にレースカーテンをつける・・・室内に熱が53%侵入
3⃣内側にブラインドをつける・・・室内に熱が45%侵入
4⃣内側に障子やハニカムサーモスクリーンをつける・・・室内に熱が38%侵入
5⃣外付けブラインドやすだれ、スタイルシェードをつける・・・室内に熱が17%侵入
同じ大きさと性能の窓でこれだけ入ってくる熱の量が違うのは驚きですよね。これらの5つの日射遮蔽に関する実際の設計手法については、これに加えて屋根・庇との組み合わせがあり、奥が深いのでまた別のコラムでじっくりと解説させていただきます。
今回は夏を涼しく快適に暮らすには窓辺がとっても大切で、さらにすまいの暮らし方(実際にブラインド等を適切に開閉する作業など)がもうワンランク上の快適性に大きくかかわってくるということを覚えておいてください。
参考文献:野池政宏『パッシブデザイン講義』