コラム
COLUMN
2021年6月26日
昼光利用|パッシブデザイン5要素
今回はパッシブデザインの5要素のうち、昼光利用についてご説明いたします。
昼光利用のデザインが目指すものは、昼間に照明をつけなくても過ごせるようにすることであり、自然光によって快適な明るさを実現させることです。
昼光利用の基本原則は「できるだけ多面採光をとる」ということです。具体的には昼間に長く過ごす部屋(LDK)には2面以上窓を設け、それ以外の部屋にも少なくとも1面以上の窓を設けるということを意味します。
その際には方位について特にこだわる必要がありません。確かに南面の太陽光は直射で入ってくることで晴れた日には大量の明かりを得ることができますが、多くの場合はそれは過剰な明るさになるので、レースカーテンやブラインドが必要になってきます。(ただしパッシブデザインの5つ目の要素である日射熱利用暖房にはこの過剰な明るさ&熱エネルギーがとても大切なのでうまく調節して活用することが大切です)
個人的には、北の端に配置することの多い洗面所には横長の窓を高い位置に設ける手法が好きです。曇りや雨の日でも、日中は照明をつけなくてもふわっと明るいのでなんだか得した気になります(笑)
このような「窓を設ける」ということは昼光利用のうちの「採光手法」という位置づけになるのですが、このほかに家の中に入った光を導いていくという「導光手法」という考え方があります。
導光手法のうち最も一般的であるものが「吹き抜け」です。
上の階に入った光を下の階の奥まで導いていきます。吹き抜けは空間の広がり(視線の広がり)をつくるために設けることも多いのですが、昼光利用としても有効です。(パッシブデザインにおいてこの吹き抜けは自然風利用、昼光利用、日射熱利用暖房の3つに有効な手段です。適切に設計することで快適性、省エネ性が向上する重要な手法となります)
吹き抜けのほかにも、隣の部屋に入った光を導くためにドアの上部などに欄間やガラスを設けて光を通すといったテクニック
室内ドアや壁を透明や半透明の素材で仕上げて光を導くテクニック
壁や天井にアールを効かせて光を反射させるテクニック
天窓や高窓を利用して光を導くテクニック
他にも庇の上面にあたった光を反射させて室内に導く「ライトシェルフ」など、ちょっとした工夫でも一年を通じてちょっと快適な室内環境をつくりだすのに有効です。
こうした手法を利用することで、昼間は照明いらずの生活を送ることができます。ちょっと得した気分になれますのでぜひご活用いただければと思います。
参考文献:野池 政宏『パッシブデザイン講義』