コラム

COLUMN

2021年6月24日

自然風利用|パッシブデザイン5要素

今回はパッシブデザインの5要素のうち、自然風利用についてご説明いたします。

緑の高原で体に爽やかな風が当たると気持ちよさそうですよね。ジ●リ作品のように・・・ただそんな環境は実際の都市部の住宅ではほぼ不可能ではありますが、体に風が当たると涼しいと感じられます。当たり前ですが低温の風が当たるとより涼しく感じることができます

この効果を利用しようというのが自然風利用の一つ目の狙いです。

もう一つの狙いは建物内に溜まった熱を外に出すことです。これには風の入口と出口が必要になりますが、換気による排熱で快適性を得ることができます。

ただし気を付けないといけないのは、自然風利用は外気温(家の外の気温)が低いときに行わないと有効な効果は得られないということです。

7月~8月の日中に風を通すことを考えるのではなく、外気温が下がっていく太陽が沈んでから夜間にかけて風を通すことが重要となります。(タイコーでは外の気温が28℃以下で湿度が60%以下の時であり、かつ室内の気温と湿度が外より高い時を窓開けのタイミングとして推奨しています)

建築地のエリアによっては、中間期(春や秋)は日中でも風を通すことで効果的に涼をとることができることもありますので、お住まい後に有効な開閉タイミングを探っていただければ、より快適で省エネな暮らし方を楽しみながら得ることができると思います。

実際には近年は夏の領域がどんどん長くなってきており、春と秋が短くなっているようにも感じられるので、暦のイメージだけにとらわれないことも重要です。

また、敷地に一定の風が吹かない条件のところでは、いくら自然風利用のための設計工夫をしても無駄になります。奈良や京都といった盆地エリアは、建築地によっては風が少ないというデータも確認されているので、安易なイメージで自然風利用を考えるのではなく、慎重に検討したほうが良いかもしれませんね。

ただ、家の室温差を利用した換気(主に1階と2階の温度差)を自然風利用の一つとして考えるのであれば、どのようなエリアで建築したとしても効果が期待できます。

まとめてみますと

①涼しい風が吹く時の卓越風向(よく吹く風向き)を意識する

②どこから風が吹いてきても風が通るように考えながら、入口となる窓から出口となる窓への通風経路を確保する(ドアなどによって風の通り道がふさがってしまうと効果が下がるので要注意です)

③一定以上の風が通る窓面積や室内開口部面積を確保する

④上下方向に通る「立体通風」を意識する

⑤最上階のできるだけ上部に「開閉可能な高窓」を設置する

ウィンドキャッチャー(建物の袖壁や縦すべり窓を利用して風を巻き込んで取り込む手法)の設置を検討する

この自然風利用でもやはり、住まい手の暮らし方が重要になってきます。いくら設計者が工夫を凝らした家であったとしても、適切に窓を開け閉めしてもらわなければ「いい風」は通りませんので自然風利用の効果を得ることができません。

ちょっとした習慣でより快適で省エネな暮らしをしていただけるのもパッシブデザインの醍醐味なので楽しんでお住まいいただければと思います。

参考文献:野池 政宏『パッシブデザイン講義』