コラム

COLUMN

2021年6月17日

断熱・気密|パッシブデザイン5要素

では今回、パッシブデザインの5要素のうち、「断熱・気密」についてご説明いたします。

 

断熱・気密は家づくりにおいても誰もが大切なことであると認識している項目ではありますが、パッシブデザインの5要素であることについて少し違和感を覚える方もおられるかもしれません。

断熱・気密の主な目的は「冬の熱損失を防ぐ(暖房設備によって家の中に発生した熱を逃がさないようにする)」ということであり、そこには自然エネルギーからの恩恵が含まれていないように思います。

しかしながら、断熱性能は建物の熱環境に大きく影響を与えるものであり、パッシブデザインの目標(高い質の室内環境の実現、省エネルギー等)を考えたとき、この断熱・気密をはずすことはできません。

また冬に窓から入り込むポカポカした太陽熱をいかに守るか(パッシブデザインの要素⑤日射熱利用暖房)、夏にギラギラの太陽熱をいかに建物内に入れないか(パッシブデザインの要素②日射遮蔽)の効果を大きく左右する項目でもあります。

こうした理由により断熱・気密はパッシブデザインには必要条件として位置づけられています。

 

「暖かく快適な冬」を実現する上で、断熱は極めて重要です。

断熱性能を上げていけば内外温度差(家の中と外の温度の差)が大きくなり、暖房室と非暖房室の温度差(家の中で暖房を入れているところと入れていないところの温度差)も小さくなります。また快適性と密接な関係がある室内の床・壁・天井の表面温度も高く維持されることで実際の室温以上の快適性を感じることができます。

 

「涼しく快適な夏」を実現する上でも断熱性能の向上(窓の性能の向上)は、日射遮蔽(できるだけ窓から室内に太陽熱を入れないこと)の効果を引き上げます。

しかしここでパッシブデザインの難しさが出てきます。

「断熱性能の向上=涼しい夏」という単純な図式にはならないことに注意してください。ここは本当に皆さん勘違いされやすいので要注意です!

「〇〇工務店や、〇〇ホームでは断熱性能を上げたら、夏も涼しくなると言われましたよ?」という声が聞こえてきそうですね・・・

確かに窓の性能を上げるという意味では日射遮蔽の性能が上がり、日射熱の侵入を止める効果があるのですが、躯体の断熱性能(壁、屋根、基礎)が向上されることで建物の保温性能が高まり、建物の中に入った熱や発生した熱が外に逃げにくくなるという現象(熱ごもり)が起きてしまうからです。夜になって日が沈んでからも、ず~っと熱がこもっている部屋・・・心当たりがありますよねこのあたりはパッシブデザインの面白さであり、ちょっと難しい話なので、またどこかでゆっくりと解説させていただきます。

いまのところは、「断熱性能を高めるだけでは(日射遮蔽が甘いと)逆に夏が暑くなってしまう場合もある」ということをしっかりと覚えておいてください。

参考文献:野池政宏『パッシブデザイン講義』