コラム
COLUMN
2022年3月12日
大地震と法律改正の歴史
日本は地震国であり、この国の耐震への法律改正は地震との闘いの歴史であるともいえます。一般的には住宅の耐震基準は3つに分けられていると言われています。
※私は個人的には4つに分かれていると思っています。それが下記の3つ+4つ目:許容応力度の構造計算によって建築される建物です。
1978年の宮城県沖地震をきっかけとして1981年に改正されるまでの家を「旧耐震」、1981年以降の基準で建てられた家を「新耐震」と呼び区分しています。2000年にも重要な改正が行われたので「2000年基準」と呼ばれています。大きく分類すると既存の建物はこの3つに分かれています。
「旧耐震」と「新耐震」の違いは大地震に対する規定です。
旧耐震では震度5の地震に耐えることを基準としていて、大きい地震については規定がありませんでした。
新耐震の基準では、震度6強~7程度までの地震でも崩壊・倒壊しないレベルの耐震性を求めています。
そのために新耐震基準では必要な耐震壁の量が約1.4倍と大きく増加しました。実際に1995年の阪神淡路大震災での建物の被害状況において、その差は出ています。
出典:国土交通省「平成7年阪神淡路大震災建築震災調査委員会中間報告」
1995年 阪神淡路大震災の被害
旧耐震・・・約29%が大破、約37%が中・小破、約34%が軽微な被害、無被害
新耐震・・・約8%が大破、約16%が中・小破、約75%が軽微な被害、無被害
新耐震基準で被害が少なくなっているのは事実ですが、見過ごせない点は「新耐震基準でも阪神大震災で約8%が大破している」という点です。
出典:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会 報告書」
2016年 熊本地震の被害(2000年基準以降の直近大地震)
旧耐震・・・約28%が倒壊、約18%が大破、約49%中・小破または軽微な被害、約5%が無被害
新耐震・・・約9%が倒壊、約10%が大破、約61%が中・小破または軽微な被害、約20%が無被害
2000年基準・・・約2%が倒壊、約4%が大破、約33%が中・小破または軽微な被害、約61%が無被害
2000年の法律の改正では格段に被害が少なくなっているものの、厳しく見ると長期優良住宅を含む約2%が倒壊、4%が大破しているのが現状です。
2000年の法律改正では具体的に以下のことを行うことが盛り込まれました。
①4分割法による耐力壁のバランスの強化
②N値計算による柱頭・柱脚、筋交い金物による接合部の強化
③地盤調査を行い地盤に応じた基礎の設計
・・・ですが、2000年基準でせっかく法律が改正したのに!その構造の根拠(構造計算)を提出しなくてもよいというルール『4号特例』があるために、審査機関は構造計算のチェックを行っていません。設計士が「確認した」と言えばそれで通ってしまう抜け道ルール。
いくら法律が改正されて、基準が厳格化されても、実際の建築確認の申請でこのような状況になってしまうのであれば「本音と建て前」のように、まるで意味のない基準となってしまっているのです。