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山村 恭代やまむら やすよ

タイコーハウジングコア 設計士

設計事務所等(公共施設・マンション・店舗・ランドスケープの設計)を経て2005年タイコーハウジングコアに入社。住宅設計では使い勝手や生活動線を考えながらも、外観形状など造形の美しさにもこだわりを持つ。幼い頃から住宅販売のチラシに載っている間取りを見るのが好きで、ファイリングまでしていたほど。現在も建築デザインについてSNS等で情報収集は欠かさない。

取材:2023年2月13日

※記載の情報は取材時のものです。

聞き手:
タイコー 羽柴 仁九郎
語り手:
山村 恭代

誰にでも馴染む可能性があって、住む人を美しく魅せる本質的な家を目指したい

家づくりの魅力とは

家づくりをお考えの方々がこのページを見てくださっていると思うのですが、そういった方々にお伝えしたい家づくりの魅力とはいったい何でしょうか?

家は「もの」であることには間違いありませんが、家というものが出来上がるまでにひとつひとつに背景があり、「ストーリー」があることを知っていただきたいですね。例えば、私はレストランに行ったらシェフの顔つき、目の前に並ぶ食材がどこから来たのか、どんな思いで作られているのかを知りたくなるし、少しでも共有したいと考えます。
全てのデザインには何らか伝統や文化といった過去との結びつきを持っています。そういった繋がりが良いデザインの背景に歴史や物語としてあるような気がしています。家づくりでもこういった「ストーリー」を共有できるよう、今回この場を用意していただいています。お会いしてお話ししたいのですが、口下手なところもありますので・・・。

山村さんはシャイだよね(笑)
では早速僕なりに山村さんの家づくりのストーリーを読み解かせていただきたいと思います。山村さんの設計を見ていると、家づくりをする上で外観や空間の造形美をかなり意識されているのではないかなと思います。

整合性のとれた美しさを追求

私は家のデザインも「身にまとう」という意味でどこかファッションのように捉えていて、その人を美しく見せる家のご提案したいと思っています。でもそれはトレンドやブランド力とかに頼った見せかけの「ラグジュアリー」ではなくて、もっとデザインの本質的な部分を大切にしています。
その一つに太陽の光の受け方(パッシブデザイン)や文化的な背景も含まれます。マテリアルで言えば、工業製品には存在しない自然の揺らぎ、石や木、手仕事のランダムさが心地よい空間を生み出します。そのような素材をどこでどう使うか。こういった細かなところへの気配りをしつつ、配された空間そのものに意味を持たせていく。余計な線を消していき、空間をきちんと整理し、構造と整合性のとれた美しい外観になることを目指しています。
いくらおしゃれしても猫背だったら素敵とは思えませんよね。まずは構造としてのすっきりした姿勢(骨格)をイメージしていきます。

なるほど、確かに家の骨格は美しさにとってすごく大切かも。家づくりの中でテクニカルな部分と表現が結晶化したときの美しさは圧倒的です。 
他に意識しているデザイン要素はありますか?

意識しているデザイン要素について

なるべくシンプルでスッキリしたデザインを心がけています。「レス・イズ・モア」ですね。
ただデザイン的にはシンメトリーのように均整のとれたもの(中国や西洋の建築)が好きであると同時に、少し不安定なアンバランスなもの(日本的な美意識、不均等)にも惹かれます。誰にでもあるのでしょうが、そんなちょっと2面性のある感性も家のデザインに影響しているのかもしれません(笑)
頭だけじゃなくって設計デザインはハートでするものですよね(笑)

ハートときますか・・・ロックですね(笑)
デザインに関しては建築もファッションも、少しの分量で品が良くなったり悪くなったりするものだと思います。同じ家でもデザインバランスの配分によって異なるものが生まれます。和と洋のバランス、男性的か女性的か、色のトーンや木の割合、キラッとしてるのかマットなのか、等々言い出したらきりがないですよね。
また、住まう人の個性・住まい方によっても引き出される魅力が異なると僕は思っています。

かっこよく言えば「住む=澄む」時を経て体に馴染むリラックスした住みこなし方は、家の最後のスパイスですね。
先ほど「その人を美しく見せる住宅をご提案したい」と言いましたが、住む人の考え方で、その先のデザインも変化していきます。
そういった意味で「施主の考えを設計士というフィルターに通す変換作業」が私の考える住宅設計だと思います。だから同じ敷地でも設計士によってさまざまな家が生まれます。

まさに今回の新モデルハウスの社内設計コンペ(2021年開催)で言いたかったことですね。
同じ敷地でも全員プランが全く違うのには、いいだしっぺの僕が一番驚きました(笑)
山村さんにとって良い家の基準はなんですか?

「良い家」の基準とは

自分が愛せるものをつくること。これはマストな要素とした上で、私が感覚的に「良い」と思うものは艶のあるセクシーなものが多い気がします。どことなく気品や色気があるというか。ちょっとのセクシーさを家に足せると、家づくりにおける新たなエッセンスが増えて、歳を重ねても家自体もお住まいになられるオーナー様にもどことなく深みが出ていくのではないかと思います。
いつまでも色褪せない凛とした美しさは男性にも女性にも共通のパワーだと思います(笑)
そういった誰にでも馴染む可能性があって、住む人を美しく魅せる本質的な家を目指したいです。映画も『永遠に美しく』がすきですよ(笑)

ロバート・ゼメキス・・・(笑)(※バック・トゥ・ザ・フューチャーなどを生み出した監督) 
僕は自分としての哲学のようなものがある人を凛としているな~と感じます。それこそセクシーですよね。
歳を重ねたときにちゃんと自分の哲学をもっている人間になりたいですね。

あと、家のトレンドは目まぐるしく変化するものですが、私は家こそタイムレスなものであるべきだと考えます。
もう21世紀なのに、家だけはやっぱり現場にいる人間の手でひとつずつ組み合わせています。
人件費の高騰で工場でパネル化して家を建てるというような流れもあるようですが、私は「人の手(ハンドメイド)」や「作業プロセス」に敬意を払う普遍的な家を追求していきたいです。

確かにそうですね。僕はお客様が本質的に求めていらっしゃるのは、家ではなく「家づくり」だと思います。そこには人の手が人の思いが大切だと信じています。

タイコーの家はパッシブデザインを実践することによって夏は涼しく、冬は暖かくなりました。
お引渡し後のお客様にこの間、「夏も冬も同じようなエアコンの温度設定で、家の中では年中着ている服も同じような恰好です。暑いや寒いは聞かれるまで気にしなくなって、まるで家を着ているみたいです」と笑いながら仰っていただきました。馴染んだ家は自分の身体感覚の拡張のようなものだと、ストレートに高断熱高気密の本質を表現してもらい嬉しく思っています。

いくら数値で説明しても、お施主さんのふっとした本質的な一言には敵わない・・・。
やっと国も家の断熱のレベルを底上げしましたが、断熱の性能値で家や施工会社の良し悪しを判断しないといけないなんていう、極めて低レベルな話は早く終わらせてもらいたいですね。
もちろんタイコーは13年前から全棟G2仕様という高断熱高気密仕様で家を建てています。プロとして家のご提案に今できることの全てを行うのは、僕としては常識なのですが、どうやらこの考えはまだまだ日本の建築の中では非常識のようで・・・情けないやら悲しいやらです。 
早く性能や設備の比較というステージから、美しさや風情といった次のステージで家のデザインを切磋琢磨したいものです。

本当にそう思います。快適性は家の本質で当たり前の事なので、家を建てるすべての人が享受して欲しいですね。
その上で日常のふとした時に、日本人としての繊細な五感を楽しめる空間を生み出していきたいです。
エコの基本はロングライフ。ロングライフの基本は美しさと、住まう人の家への愛着だと思うので。

家も「永遠に美しく」ですね(笑)

社内コンペ「LIFE」山村案

MUSIC FOR THIS TALK

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by Link Wray

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Stone Free

by Jimi Hendrix

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Suck My Kiss

by Red Hot Chili Peppers

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