家の話をしよう - 専門家との対談 [ロングライフ]
TALK SESSIONS
Long-life


山下 大輔やました だいすけ
D-works株式会社代表取締役社長
滋賀県を拠点に住宅・不動産事業を展開する同社を率いる代表。高性能とデザイン性の両立にこだわり、「ホテルのように美しい日常」を実現する住まいづくりを推進している。SNSを活用した集客戦略にも注力し、年間600組の反響を生み出すなど、地域No.1を目指し事業を拡大している。
取材:2025年9月19日
※記載の情報は取材時のものです。

- 聞き手:羽
- タイコー 羽柴 仁九郎
- 語り手:山
- 山下 大輔社長
未来の豊かさを選ぶ、原点回帰の家づくりを目指して
羽今日は、滋賀県の工務店D-works株式会社の山下社長にお越しいただきました。
日頃からSE構法登録工務店の仲間として、こだわりの家づくりをする仲間として、モデルハウスを行き来して色々な情報交換をさせていただいております。今回はD-worksさんの家づくりについて、そしてこれから注文住宅会社としてどうしていきたいのかまでお話をお伺いできればなと思っております。
どうぞよろしくお願いします。
山こちらこそ、よろしくお願いします!

家づくりの原点について
羽山下社長はもともと美容師をされていたんですよね。
そこからどのような経緯で家づくりの道へ進まれたのですか?
山26歳までは美容師、その後不動産業界に入って、30代前半まで営業をやっていました。そこから工務店と不動産を両方やっている会社に入って、最初は完全に「不動産側」の人間でした。
羽そこから“つくる側”に?
山そうなんです。もともと美容系から来ているので「ものづくり」は好きだったんですけど、家の建て方は全く知らない状態。
とりあえず現場に行って、大工さんや設計士さん、ICさんの仕事を見ているうちに、「家づくりってめちゃくちゃ面白いな」ってすぐに思いましたし、作業するみんなが神様に見えるくらいリスペクトしていましたね(笑)
でも住宅建築の知識が全くなかったことが、逆に強みになりました。業界の固定概念が自分にはなかったので「なんで玄関框ってこうじゃないとダメなんですか?」「なんでこの納まりが当たり前なんですか?」という疑問からデザインを追求し始めました。既成概念にとらわれず、自由な目線で素材を選定できたのが大きかったですね。多分違う畑で働いた経験がある羽柴社長もそうだったんじゃないですか?
山僕もそうですね。建築の専門知識がないからこそ気づくことがあるので……今でもあれやこれや言わせてもらってますよ(笑)

デザイン・断熱・耐震、究極のバランスを求めて
山最初はとにかくデザインのことばっかり意識していました。でも40歳を迎えて、自分の家族のことを考えたときに「かっこいいだけじゃダメだな」と思ったんです。そこから断熱、そして耐震(SE構法)へと、こだわりが深まっていきました。
羽デザイン→断熱→構造という流れですね?
性能とデザインの両立は、多くの会社が苦労する部分ですよね。
山そうですね。断熱はすごいけどデザインが……、あるいはデザインはいいけど性能が……という「欠落」が業界には多い。最終的にSE構法に行き着いたのは、「強くて、快適で、ちょっとかっこいい」この3つが、ようやく全部つながった感覚があったからです。
正直「ダサくて寒くて弱い家を建てたい」って人、いないじゃないですか(笑)。家って本来どれかを犠牲にするものじゃないと思うんです。“全部ちゃんとしている家”をちゃんと説明してあげるのが僕らの仕事だと思っています。

長期視点で考える家づくり
羽D-worksさんのウェブサイトに掲げられている「人生を満たす家」という言葉。これは具体的にどのような考えに基づいているのでしょうか。
山 一言で言えば、「基準をどこに置くか」ということだと思っています。今の制度で「この基準でいいですよ」と言われている最低限のレベルで満足するのか。それとも、未来を見据えて今できる最善を尽くすのか。
羽基準の置き方次第で、将来の「満足度」が変わってくるということですね。
山そうです。もし「100年住宅」を目指すのであれば、100年先まで快適でいられなければならない。そのためには、断熱性能や耐震性能を最高レベルで備えるのは大前提です。その上で、私が大事にしているのは「アクティブエイジング」、つまり初期性能だけでなく、いかに美しく劣化を抑え、維持管理し続けていけるかという視点です。

羽性能を長期間持続させること、そして経済的な安心も含まれます。
山将来、電気代が高騰しても「家計が破綻しない」という経済的な裏付けがあること。そして何より、家族がずっと「健康」で過ごせること。
昔は水道水をそのまま飲んでいましたが、今は「飲料水」や「浄水器」を買う人が増えましたよね。家も同じで、ただ住めればいいという段階から、本質的な安心や健康を買う時代になっています。この「健康」と「経済的な安心」という揺るぎない土台があって初めて、人生が真に豊かに満たされるのだと考えています。
羽あくまで「強くて快適でちょっとかっこいい家づくり」っていうのは手段であって、目的は「豊かに暮らす」ことだったりします。
山そうなんですよ。セールスだけのことを考えていたら見失う部分ですけど、住まい手にとっての真の豊かさってなんだろうと追及していくことが楽しくて楽しくて。「今月は何棟売るんだ?」「いくらで契約できたんだ?」という会話ではなく、もっと「水切りの納まりどうする?」「断熱何ミリにしようか」「この窓の位置で本当に気持ちいいかな」という話をしている時のほうが、圧倒的にワクワクする。その過程を楽しめることが、僕たちの原動力なんです。
結局、そういう積み重ねが暮らしの質につながるし、住んでから「あ、いい家だな」って感じてもらえる部分なんじゃないかなと思っています。
モデルハウスで勝負する「3つのこだわり」

D-works甲賀ハウススタジオ
羽D-worksさんのモデルハウスを拝見すると、随所にハッとする仕掛けがあります。山下社長が特に「ここで勝負する」と考えているポイントを教えてください。
山3つあります。
1つ目は「線」。
線(ライン)をそろえるのはもちろんのこと、隠すのか、細く出すのか、重ねるのか。
2つ目は「影」。
2Dの空間を3Dに見せるのは光ではなく、実は「影の落とし方」です。あえて暗い部分を作ることで奥行きを生まれる。影があるから、空間は立体的に見えます。
3つ目は「素材の相性」。
料理と同じで、なぜここにこの素材を置くのか、その「配合」を意識しています。全てを同じ素材にするのではなく、異なる質感をどう組み合わせるか。全部クロスでも、全部メラミンでもダメ。“なぜここにこの素材なのか”が説明できることが大事ですね。
特に1つ目の線はコストをかけずとも、プロの意識一つで変えられる部分です。そこをさりげなく伝えて「だからかっこいいんだ」と納得していただきたいですね。

羽「線」が勝負ポイントだというお話がありましたが、やはり美容師時代の経験が生きているのでしょうか。
山そう思います。美容師時代、カットモデルの方が持ってくる雑誌の切り抜きを見て、「この人の骨格や雰囲気なら、外巻きよりも内巻きの方が綺麗に見えるな」と判断する感覚と、今の家づくりは地続きなんです。
羽建築のフェイスラインを整えるような感覚ですね。
山まさにそうです。「ここは少し内に入れた状態で、ここにシェード(影)を落とそう」といった判断は、カットモデルの顔周りをデザインするのと同じです。プランがそもそも良くないと綺麗な線は出せませんし、そこはプロとしてのこだわりですね。

山素材の組み合わせについては、料理にも近い感覚があると思っています。「なぜ、ここにキャビアが載っているのか?」と考えるんです。それは見た目が豪華だからではなく、味や食感、全体のバランスを成立させるために、キャビアでなければ成立しない理由がきっとそこにあるはずなんですよね。家づくりも同じで、僕は全部を面材をメラミンに統一すればいいとは思っていません。あえてクロスを合わせることで引き立つ場所もある。
羽適材適所というか、全体のバランスですね。
山現在、宿泊体験を重視した2棟のモデルハウスを運営しており、さらに追加で2棟を建築しています。
デザインや素材選びはもちろんですが、たとえばサッシをトリプルにするかどうか、付加断熱を何ミリにするか。UA値などの数字だけでは分からない「体感」を、四季を通じて知ってほしいんです。
カタログや数値だけでは伝わらない、朝起きたときの室温の安定感や、真冬の窓際の心地よさ。夏の直射日光をどう受け止め、どう逃がしているのか。そうした感覚は、実際に泊まって、暮らすように過ごしてみて初めて分かるものだと思っています。
だからこそ、モデルハウスは「見せる家」ではなく、試して、比べて、納得してもらうための家でありたい。
設計の意図や数値の裏側にある考え方を、体で理解してもらえたら嬉しいですね。
羽実際、お客様の反応はどうですか?
山色んな意見をいただきますよ(笑)。「床暖房を入れようと思っていたけど、この性能ならいらないと気づいた」と言われるのが一番嬉しいですね。無駄なオプションを省き、本当に必要な部分にコストをかける。「納得して選ぶ」というプロセスを大切にしていただきたいです。

D-works甲賀ハウススタジオ
山下社長から見るタイコーとは
羽率直に、うちの会社ってどう見えてます?
山一言で言うと「変態」です(笑)。
羽……それ、褒め言葉ですよね?
山もちろんです。
素材の組み合わせ、線を通すことへの執着、そこまで考える?ってところまで考えてる。ポリシーが強い人は、外から見ると“変態”に見えるんですよ(笑)。
今日もFLOOR鶴見を見学させていただいたときに羽柴社長が突然面材をなでながら「このテカリが気になるんですよ~」って言った瞬間「あ、やっぱ変態だなぁ」って思いましたね(笑)。
自分自身も変態だと思っていて、変態同士ですごく気が合うのかなって思ってます(笑)。
羽確かに、僕は美容系ではないですけど「ファッション」を楽しむように住宅のことを考えているところはあります。だから細かい施工のことはわからないけど、質感や素材の相性には、どうしても敏感になってしまいますね。違和感に気づいてしまうと、もう嫌で仕方ないんですよ。
山「ヤマシタイズム」なのか「ハシバイズム」なのかわかりませんが、お会いしていても、そのこだわりがひしひしと伝わってきます。同じ「変態同士」この感覚を大切にしていきたいですね。

「展示場」から「本質の可視化」へ
羽以前と現在とで、家づくりに対するスタンスや考え方は何か変わりましたか?
山一つ言えるのは、今は本当にお客様にとって色々「イージー(選びやすい)」な時代になったな、ということです。
羽SNSやYouTubeなどで、情報がこれだけオープンになっていますからね。
山そうなんです。数値や性能が可視化され、僕らのようなインフルエンサーがYouTubeで裏表なく喋ることで、お客さんが「こんなこともできるんだ」「こんな工務店があるんだ」と先に知ることができるようになりました。
10年前なら、とりあえず住宅展示場へ行って、中身がよく分からないまま平面図が完成して、契約してショールームに放り込まれる……そんな時代でした。でも今は、先に自分たちの基準で選ぶことができる。これはすごく良い時代になったなと。
羽お客さんのリテラシーが上がった分、造り手側にも本質が求められます。だからこそ僕が強く言いたいのは、「目先のイニシャルコスト(初期費用)だけで選んでほしくない」ということです。「今」がマックスの状態で、将来的に家族が元気でいられない家を建ててしまったら、それは具合が悪いじゃないですか。構造や性能の話は、デザインに比べれば「面白くない」部分かもしれませんが……。
山そう、面白くないんです。でも、そこが一番重要なんです。ようやく、本当の意味での「原点回帰」が起きたと感じています。家とは本来、自分を守り、家族の命を守るもの。その構造体が可視化され、しっかりと評価される。デザインだけでなく、家族の健康や、将来の家計まで含めて納得して選べる。そうした「家づくりの本質」を伝えることが、今の僕のスタンスになっています。

2030年の住宅はどうなっている?
羽2030年に向けて、日本の家づくりはどう変わっていくでしょうか。
山カーボンニュートラルなど世界基準の目標達成はマストになりますよね。
今、電気代が高騰していますが、シミュレーションすると断熱性能によって30年で数百万円の差が出ます。ドイツでは電気代が日本の倍以上になっている例もあり、日本もそうならないとは限らない。
家はデザインでも、価格でもなく、人生を守るインフラだと思っています。
羽家の「燃費」がより重要になる時代ですね。
山少し前までは、水道水をそのまま飲むのが当たり前でした。でも今は、多くの人が「安心」や「健康」を理由に、水を選んで買う時代になっています。
家も同じで、ただ住めればいい時代から、「健康や資産を守るための性能」にお金を払う時代に変わっていく。
家の価格は、建てるときの金額だけでは決まりません。
光熱費やメンテナンス費用といったランニングコストを含めて考えてこそ、本当の意味での「家の価格」だと私たちは考えています。イニシャルコスト+ランニングコスト、その両方を丁寧に見つめながら家づくりを考えることが、結果的に、暮らしの安心や将来の価値につながっていく。
そんな考え方が、これからの住まい選びの一つの基準になっていくのかもしれません。
羽性能とデザイン、そして未来の生活まで見据える。「変態」的なこだわりが、結局はお客さんの幸せに繋がりますね。本日はありがとうございました。
山ありがとうございました。


