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魚谷 声佳うおたに せいか

タイコーアーキテクト 設計士

2017年、株式会社タイコーアーキテクトに入社。2019年より営業企画業務を行いながら設計業務も始める。二足のわらじで培ってきた多様な知識やセンスがプランニング・コーディネートに遺憾なく発揮されている。現在は1児の母として育児の傍ら、設計業務をこなす。趣味は ライブ / 食べること / ネットショッピング。

取材:2023年2月6日

※記載の情報は取材時のものです。

聞き手:
タイコー 羽柴 仁九郎
語り手:
魚谷 声佳

今にベストを目指すのではなく、長いライフスタイルの中での「最適」を

要望を汲んだプランニングについて

魚谷さんのプランと言えばお客様のやりたいイメージをしっかり反映させていながらも、どこかロマンチックな要素があるなと感じているのですが・・・どんなイメージでプランニングやデザインをしていますか?

ヒアリング時にお伺いしたご要望をしっかり汲み取りつつも、プランに自分の直観を加えていくからかもしれないですね。家づくりにはデザインの美しさだけじゃなくてパーソナルな事柄や、文化的な背景といったオーナー様と実は共有しているようなことを汲み取った直観的なフィーリングも大切だと思っています。
またその土地が持つ日当たりや景色、雰囲気、匂いのようなものをしっかりと理解して、もともと建っていた家や街並みに薄く上書きしていくよう心がけていますね。 
もともとの素材(土地)の魅力を出したいので、味付けは薄目で(笑)

食べ物もちょっとこだわり派やもんね。
家づくりを通じて何か伝えたいことはありますか?

家づくりを通じて伝えたいことについて

「簡潔」や「端正」という言葉が好きなのですが、端部の美しさを表現したいですね。あと建築をとりまく社会的な問題に対しても汲んでいきたい。口に出すとナウシカみたいで恥ずかしいんですけど、次にタイコーがやろうとしている日本の森からはじまる住まいづくりにはワクワクしてます。構造材が奈良のヒノキになったら家の香りとかもちょっと違うのかなとか(笑)

国産材の木を使った家って今ではまだ特別に感じてしまいますが、本来のサステナブルは消費者が何も考えずに、ただ心地よいと感じて手に取った商品が環境に配慮されたものであることだと思っているので、構造だけでなくもっといろんな家づくりの素材がそうなっていけば素敵だなと思います。

なるほど。サステナブルなことも好きなのね。
手がけた家のイメージともなんとなく重なるよね。日本は森林大国だから 構造だけでなくもっと本当はいろいろなものが地産地消できる可能性はありそうやね。
そういった思いで始まるムーブメントには、過去への敬意も感じられるしなんだか懐かしい未来につながっていきそう。
これは音楽に例えるとブルースかな~?古典的なものにアドリブを加えていく感じ。

伝統的なのに今風なもの。やっぱり好きですね。単純に「シンプル」という言葉だけでは形容できない「引き算の美学」、日本人の美意識は現代人にも受け継がれているんだと思います。
例えば有田焼や波佐見焼のお皿を今風のデザインに落とし込むKIHARAさんやマルヒロさんなど、伝統とモダンデザインが融合したようなプロダクトにはすごく引きつけられますね(笑)古い建築物はやはりお寺が好きですね。桂離宮や銀閣寺のシンプルでガランとした空間と、手入れの行き届いたお庭・・・。人の手による建築と自然の庭でつくる調和という、不完全なものをなんとか成し遂げようとする日本人らしさ。いじらしくてなんだか優しい企てだなと思います。

設計するときのポイントについて

設計時に心がけていることはありますか?

家の設計では敢えてひとつラフなものを取り入れて崩してみたり、スタイリングと同じで少し住まい手のエッセンスを入れてみるのが大好きです。カッチリと決め込んだ洋服に一点ビビットなカラーのマフラーをポイントに置いたり、足元はハイテクスニーカーを合わせてみたり・・・(笑)

私はヒアリング時に10人いれば10人が要望にあげるような流行りの内容も、本当に価値のないものであれば自然に消えていくと思っています。今はネット検索の時代なので家の設計を検討中の方はその要望が極端に似通っていますよね。

ご要望に挙げてくださっていることは果たして本当にご本人が心から欲しいものなのか?皆が良いと言っているから流されているだけなのではないか?と疑問を感じるところも正直あります。

プランの相談を受ける設計士はオーナー様にとって影響力の強いポジションだと思うのでなおさら慎重にお答えしないといけないと思っています。性格的にNGはあまり言いませんが、本音のオススメはものすごく勧めますので、そこは信じていただきたいですね(笑)

だいぶ強気(笑)
そんな魚谷さんは現在進行形で子育て共働き生活中。タイコーの中古物件をリフォームして住んでいますが、実際にタイコーの家に住んでみて考えが変わった点などありますか?

実際にタイコーの家に住んでみて

独身の時、賃貸の時とはあきらかに家に対してのリアリティが違います。共働き育児は本当に時間との闘いです。それまではかっこいいなど直感的なデザインを重視していたのですが、住んでみてわかったことはやっぱり家を最終的に完成させられるのは住む人。家に息吹を与えるのはその家に住んでいる人とその知恵でないといけないと感じました。
プランで「今」にベストを目指すのではなく、長いライフスタイルの中での「最適」をイメージした引き算提案をしていかないといけないなと感じました。

魚谷が実際に暮らす「2.5階建ての家/東大阪市」

家はどの家もひとつしかないので希少価値が高いのですが、そこ(オーダーメイド)に意味があるのではなく、出来上がった家とその方が住んで完成する「暮らし」そのものに価値があると思います。成熟した文明の中で価値観も「モノ」ではなく「コト」、そして「トキ」に移行してきたのだと思います。
だから建ててくれてありがとうではなく、作り手側からすると暮らしてくれてありがとうと言いたいくらいです。

意識しているワンポイントは、敢えて家のどこかにメイドインジャパンを加えたい。日本の美意識をどこかに添えることで、ちょっと元気のない日本の会社を応援したいです。これからの時代は価値観も量より質へとはっきりと変化していくので、住まわれるお子様方に日本の文化や伝統を、これからの技術と組み合わせて新しい価値として創造してほしいという願いもあります。

確かに。高級ワインはあっても高級日本酒って本当に少ない。「廣戸川」も「田酒」も美味しいけれど安いもんね~。購入する側としてはありがたいけれど(笑) 
ブランド力のある高級なものって車もファッションも海外のものが多いよね。ローカル(伝統的)な文化に基づいた新しいラグジュアリーの提案は、今まさに世界の最先端だからちゃんと学んで理解していかないといけないよね。
タイコーも含めて、がんばれニッポン!!

日本的な佇まいを取り入れる

空間デザインについてですが、私は京都の生まれなので少しほの暗い日本的な佇まいもすごく好きです。
パッシブデザインは熱としての強い直射光ですが、谷崎潤一郎の陰翳礼讃(いんえいらいさん)のような「暗がり」や「翳り」をつくりだす、どことなくぬるっとした光の手触りや匂いもいいなと感じます。

建築で取り込む光も、照明器具の明かりも、人の精神になにかしら作用しているんだろうね。
建築照明の事で言えば器具のその先、「何」を照らすのか。壁なのか、庭の樹々なのか・・・直接照らすのか、反射させて浮かび上がらせるのか・・・といった空間そのものへの提案になってきています。広さだけでなく、お客様にもこういった「質」の概念が認識されていけば、ようやく住宅業界も次のステージに入っていくのだと思います。

今に残る日本の伝統建築も、実は最先端の技術を使ったイノベーティブな存在であったと私は思っています。
次は私たちが新しい伝統をつくる番。私個人としては新しい技術を使いながらもどこか原風景と繋がるロマンティックな空間を目指したいです。 重量木骨の家(SE構法)もパッシブデザインも言葉の響きがとっても固いイメージがあるのですが、読み解いてふにゃりと人の暮らしや風景に寄りかかるそんなしなやかな家づくり。薄くて柔らかい膜のようなイメージを大切にしていきたいと思います。

ネコのようにしなやかで直感的。でも頑張り屋さん。
魚谷さんそのものやね(笑) 
やっぱり設計思想は設計士の人間性が出てくるね。

社内コンペ「LIFE」魚谷案

MUSIC FOR THIS TALK

Mannish Boy

by Muddy Waters

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On the Road Again

by Canned Heat

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You Gotta Move

by The Rolling Stones

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